ごま油の話(第3話)

ごま油の話(第3話)

猫楽団を結成

さて、前回の続きです。
昼は珈琲屋さんのインターネット店店長。
夜は小さなライブハウスのバーテンとサックス吹きとして働いていた、
20歳頃の僕。

そのライブハウスで、あるボーカリストと運命的な出会いを果たします。
そのボーカリストと僕はユニットを結成しました。
「猫楽団」といいます。
女性ボーカルと、ギタリストの僕。
二人組でした。

特に人気があったというわけではなかったのですが、
当時横浜のビブレの中に、島村楽器という楽器屋さんがあって、
その楽器屋さんは全国チェーンなのですが、
全国規模のバンドコンテストをやっていたんですよ。

それで、たまたま仲のよかった店員さんに、
「ねー、これ出てみない?」
と声をかけられ。

「いやー、あんまりそういうの興味ないんですよねー」
って最初は言ってたんですけど、
よくよく話を聞いてみると、
店舗ごとに出場バンドをある程度の数集めるというノルマみたいなものがあるそうで、
「頼むよー」みたいな感じのことを言われて。

確か参加費が3000円でした。

当時の僕は、サイゼリアに行って、プチフォカッチャだけ頼んで、
テーブルに備え付けのオリーブオイルと塩をいっぱいつけて、
カロリーと塩分を補給していたような、
超貧乏野郎だったのですが、
そのバンドコンテストに関しては、
「んー、まー、いっかな。出よう。」
ということになって、
まずはテープ審査を受けることになりました。

全国で2330バンドが応募しているテープ審査。
テープ審査に通らないと、
ライブ演奏すらさせてもらえないというシステムでした。

 

あれ、テープ審査通過しちゃったんですけど

神奈川は結構な激戦区で、
テープ審査だけでも数百という数が集まっていました。
全国の応募総数が2330バンド。

「おつきあいで出したテープだし、まあ何も起こらないだろう。バンドサウンドじゃないし」
なんて思っていました。

ギター一本とボーカルで、ジャズっぽい音楽をやるっていう、
年齢に合わない音楽をやっていたのです。

ところが、そのテープ審査で神奈川代表10バンドに、
「猫楽団」が選ばれてしまったのです。
選ばれた当人たちが一番びっくりしていました。

そして、
僕たちは神奈川代表10バンドとして、
神奈川のチャンピオンを決める神奈川ファイナルに出場。
横浜アリーナのサウンドホールのステージに立ったのでした。

 

神奈川ファイナルの結果は?

周りはほとんどロックやパンクのバンドばかり。
僕たちは、ギター一本とボーカルの二人。
しかもジャズっぽい大人しい感じの音楽。

「あー、こりゃなんて場違いなところに来てしまったんだ」
というのが、リハーサルの時の印象でした。

しかも、みんなすごくうまいんですよ。
かっこいいバンドばっかりで。
ホーンセクション(トランペットやサックス)までいるバンドもあって。
こりゃ到底敵わないなー、なんて思いながら、
とりあえず、ステージを楽しもうと思って本番に臨みました。

あんまり盛り上がる感じの曲でもないので、
良くも悪くも、なんとなーくいい感じの雰囲気で、
僕たちの演奏は終わりました。

他の9バンドも熱い演奏をして、
もう僕たちは結果とか全然考えないで、
「楽しかったねー」とか言いながら、
気がつけば結果発表になっていました。

司会「優秀賞(準優勝のこと)TAZ!」
会場の拍手「わーーーーーー!!!!」
僕たち「わーーー、すごいねーーー!」

そして、グランプリの発表です。

司会「グランプリは・・・!!猫楽団!!!
会場の拍手「わーーーー!!!!!!!」
僕たち「わーーー、すごいねーーー!」

僕たち「・・・・。へ???・・・。うそ?」

僕たちは、状況を飲み込めずにいました。

神奈川ファイナルで、
優勝してしまったのです。

そして、そのまま、
恵比寿ガーデンプレイスで行われる、
全国ファイナルにノミネートされたのでした。

 

全国ファイナル出場

全国2330バンドの頂点を決定する、
全国ファイナルに出場することになりました。
会場は恵比寿ガーデンホール。

僕たちが普段ライブしていたのは、
ちょっとした喫茶店とか、
小さなライブハウスだったので、
リハーサルの時にその会場の大きさにびっくり。

全国ファイナルに出場したバンドは11バンド。
そのほとんどはバンドスタイル。
二人組なんか僕たちだけでした。

実はその時に、
その後のキーマンに出会ったりもしているのですが、
その話はまた今度にするとして。

リハーサルは本番前日。
普段は本番直前リハだったので、
前日リハなんて初めてでどきどきしました。

僕たちは、
仙台代表のポップで元気のよいバンドと、
埼玉代表の激しいプログレッシブロックのバンドに挟まれて、
じみーな音楽をやることになるのでした。

「まあ、とにかく楽しもう」

そんな感じで、本番を迎えました。

 

恵比寿ガーデンホールでのありえないトラブル

実はこのとき、
のちのアニメONE PIECEの主題歌を歌うことになった、
TRIPLANEというバンドも北海道代表で出場していました。

若気の至り(?)もあって、
余裕ぶっこいてるふりして調子ぶっこいていた僕ですが、
演奏が始まるまで心臓はバクバクでした。

そして、仙台代表のバンドのステージが終わり、
僕たちはついにステージに上がりました。

750の席はほぼ満席。
幅183メートルのステージ。
たった二人の僕たちは、
おとなしいおとなしい、
しっとりとしたジャズを、
演奏するべく、ステージへ。

僕は、立ってギターが弾けないので、
座ったまま。

そして、僕から始まる、
静かな静かなイントロ。

「ぶぉおぉぉぉぉぉおおおおおおおおお!!!!!!」

!!!!!!??????

 

恵比寿ガーデンホールがBarに(笑)

アンプのボリューム設定が
リハーサルの時とずれてしまっていて、
僕のギターがイントロからいきなりハウリングを起こしてしまったのです。

ハウリングというのは、
アンプからでたギターの音をギターが拾ってしまい、
その音がまたギターから出てしまう、
という状態を繰り返して大きな音が一気に出てしまう現象です。

カラオケとかで、マイクの向きによって
「ヒーン!」って音が出ることがありますよね。
あれです。

全身から冷や汗が吹き出しました。
でも、
演奏はもう始まってしまっている。
やり直すことなんてできない。

僕は、焦りながらも手元のボリュームをさっと絞り調整。
それ以降ハウリングは起こらず、
演奏は順調に進みました。

演奏後、750席満員のお客様からの拍手。
嬉しかった。
でも、僕たちの音楽って本当に地味で盛り上がらないんです。
なんだか、バーのようなまったりとした雰囲気になりました。

僕たちの次に出演したのが、埼玉代表のバンド。
そのボーカルが、その後の僕のキーマンになるとは、
その頃はいざ知らず。
(そのお話はまたおいおい)

ともかく全てのバンドの演奏が終了し、
あとは結果発表を待つのみとなりました。

 

 

ONE PIECEの人たちに勝っちゃった(笑)

司会「優秀賞(準グランプリ)、ふぐさし!」
ふぐさしは山口代表のバンドで、全員女の子バンドでした。

そして、

司会「優秀賞(準グランプリ)がもう一バンド。神奈川ブロック横浜ビブレ店代表、猫楽団!」

なんと、僕たちは準グランプリに輝きました!!!
商品として、レコーディング機材もいただきました!びっくり。

優勝したのは新宿代表のドライハイというバンドでした。

北海道代表で、のちのONE PIECEの主題歌を歌うことになるTRIPLANEは、
この時は表彰されませんでした。
(いまだにちょっとだけ自慢です、笑)

こんな嬉しいことがあり、
その後仙台の定禅寺ストリートジャズフェスティバルに参加したり、
いろんなところからいろいろ声をかけてもらい。

レストランなどでの演奏も含めると、
年間100本以上のライブをするようになり、
ギャラなどもいただくようになっていました。

が、
このころから大きな闇が僕を包むようになったのでした。

 

(続く)

 

 

おまけ

猫楽団の頃の写真です。

 

演奏風景

 

取材を受けた時の写真

 

小さめサイズの写真しかありませんでした。悪しからず。

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